<音と染の融合 S・CORE>

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□音禅法要
2013年5月18日、快晴。
サヌカイトの打音と雲水さんの読経が紫野の空に抜けて行きました。
臨済宗のお寺として京都紫野の地に700年続く大徳寺の仏殿で行われた「音禅法要2013」。
東日本大震災と紀伊を襲った水害の犠牲者鎮魂のため、大徳寺管長様をはじめ山内塔頭の和尚様や僧堂の雲水さんからなる大徳寺派の僧侶の皆様の読経、それに熊野本宮大社から宮司様を招き大祓を行うなど、神仏合同の形で法要が行われました。
この法要のもう一つ大きな特徴、それは世界的な音楽家ツトム・ヤマシタ氏による「観・聞・香」など人の感性を介しての読経と音楽の融合です。
川邊はこの音禅法要2013にて、ツトム・ヤマシタ氏の衣装に用いる布と、楽器「サヌカイト」を飾る友禅のよる染布の製作を担当しました。
□ツトム・ヤマシタ氏との出会い
ツトム・ヤマシタ氏と始めてお会いしたのは2012年の秋。
同志社大学の寒梅館の一室で、同学大学院の村山教授のお引き合わせにて実現し初対面でした。
高校生の頃からプログレッシブ・ロックなどを聴き、関連書籍を読みあさっていた私にとって世界のアートシーンでリスペクトされる日本人ミュージシャン、ツトム・ヤマシタ氏はヒーロー的な存在でした。それから30年が経ち氏に実際にお会いし、さらにプロジェクトでご一緒できるなんて!
□宇宙からのインスピレーション
事の発端は、JAXAと同志社大学が実施した宇宙実験「SPACE SAKURA(スペースサクラ)」でした。
この実験は、世界の宇宙機関で唯一日本のJAXAのみが実施している文化・人文社会分野での科学利用パイロットミッション(芸術利用)で、”無重力空間で友禅で染めた桜が舞う風景を3D動画で取得する”というもの。
川邊はこの実験に企画者のひとりとして関わりました。そしてそのアウトリーチの一つとして実験で得られたインスピレーションを用い、禅や宇宙を哲学や芸術として表現される「音禅法要」やツトム・ヤマシタ氏と共同で、染めを開発することになったのです。
□無と有、禅と友禅
私は、今まで習得してきた「友禅」とは、表面上、文様を豪華に「プラス」する方向性をもったもので、無駄なものをそぎ落とす、色で例えるなら白と黒の「禅」とは真逆の性格をもっていると考えていました。(禅に傾倒していた故スティーブ・ジョブス氏が作った製品のほとんどが白か黒)ここが最大の矛盾点で、この音禅法要でのプロジェクトに、真逆の性質を持った友禅でどうやってアプローチできるのだろう、、、と悩み続けていました。
ある日、ツトム・ヤマシタ氏にこの件を相談したところ、「それでいい」と一言。・・・ますます分からなくなってきました。
□結合するための「素」
「禅」の本質までは遠く及ぶはずもありませんが、「音禅法要」で使う染布を製作する上で不可欠な考えとして私なりに導き出した答え、それは、不必要な飾りや鎧を省くことで、物事の本質とも言うべき「素」に近づき、新たな融合を得ることができる、でした。
そぎ落とす、素になる、数学でいう素因数分解に相当する考えを染めの中に持ち込む事にしました。
さて、加える方向性の友禅を素まで分解する事は可能なのでしょうか・・・
□無になる染
正確な染を行うには長年の経験や技術が必要です。我々友禅の業界の人間も長い時間をかけその技を磨いてきました。作品を作るにしても何をモティーフにするのかや、どのような構図にするかなど、作品の出来栄えに大きな影響があり、作家はそこに最大の腐心します。私はここの観念、すなわち「構図」「色」「テクニック」など、長年知識として身に着けてきた鎧である「作画意図」を思い切って捨てる染め方として、墨流し技法を応用した今回の「S・CORE(エスコア)」の染を考えつきました。水面に浮かせた色を、ツトム・ヤマシタ氏の奏でるサヌカイトの波動のみで動かし布に染着させるこの技法は、その染に関わった誰もが自分の作為を反映させる事はできません。全くの「無」により描き出される文様・・・「S・CORE(エスコア)」はまさに、人の作為を無視した、究極の抽象といえるかもしれません。
今後の「S・CORE(エスコア)」の展開にご期待ください。
<S・CORE(エスコア)>
サヌカイト音の波動による染。
サヌカイト、サウンド、ソニック、ソメ、スペース、サクラ、の頭文字の「S」と芯を意味する「CORE」を組み合わせた造語。
Score(楽譜)の意味も持つ。
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テレビ東京「宇宙ニュース」

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テレビ東京「宇宙ニュース」にて,”宇宙さくら吹雪”実験が紹介されます。

http://www.tv-tokyo.co.jp/spacenews/

本日4月12日(木)21時54分〜 テレビ東京系で放送です。
無重力で舞うさくら吹雪の動画が番組内で使われると思います。

我が家は地デジアンテナを京都の鬼門方向(比叡山)へ向けいていますので,
テレ東系のテレビ大阪は視聴できません・・・涙
BSジャパン(日曜日20時54分〜)で観ます。

宇宙で舞う花ふぶき

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数年前から取り組み,今年(2012年)2月2日に実施された「スペースサクラ」実験について,大学からの広報が終わり,新聞紙面に記事が掲載されましたのでご報告します。

読売新聞さん

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kyoto/news/20120331-OYT8T00033.htm

Yahooニュースさん(京都新聞さん)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120330-00000020-kyt-l26

JAXAさんKIBOウイークリーニュース(動画)

http://iss.jaxa.jp/library/video/spacenavi_wn120215.html

文化・人文社会科学利用パイロットミッション『「赤色」でつなぐ宇宙と伝統文化』?(7分12秒あたりからです)


??JAXAホームページの記事

http://iss.jaxa.jp/kiboexp/news/120206_spacesakura.html

「SPACE SAKURA」ミッション大成功!

国際宇宙ステーション(ISS)の無重力空間にて,
友禅で染めサクラを舞わせる実験「SPACE SAKURA」ミッションは無事成功しました!
今回はISSからリアルタイムで画像を下ろし,筑波宇宙センターの実験管制室で3D画像をモニターしながらの実験でした。
真っ暗なモニター画面にパッとテスト画面が写った瞬間,鳥肌が!
JAXAスタッフのみなさん,それにここまで導いてくださった村山先生,同志の渡邉さん,
本当に感謝です。
成功して良かった・・・・(涙)


UOA(User Operation Area)にある地球画像の壁面へ,
同志社大「TEAM SPACE SAKURA」の寄せ書きもさせていただきました。
子どもの頃からの夢が叶った日,
私は雅号”祐之亮”ではなく親からもらった名”祐司”で記しましました。

「友禅×宇宙」実験の日程が決定しました。

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三年前から取り組んでいる国際宇宙ステーションで実施予定の「桜ふぶき」実験ですが,
ついに2月2日に行われる事になりました。
読売新聞さんに取材いただいた記事がWEBにもアップされました。
写真は友禅で染めた12色の桜の花びら。
昨年10月にバイコヌール宇宙基地から
ロシアのプログレスロケットで打ち合わげられ,
現在地球の軌道上をまわっています。

京都きものサローネ開幕

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11月1日,準備を進めてきていた「京都きものサローネ」が開幕しました。私が同志社大学で研究させていただいてる「宇宙×京都」を具現化した作品展「宇宙ときもの」展を,この「京都きものサローネ」で展示しています。

「京都きものサローネ」
商談見本市:平成23年11月1日(火)・2日(水)
一般公開 :平成23年11月3日(祝)
      10時?20時(11/3は17時まで)
会場:京都産業会館3・4F(四条通烏丸西入)
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今回,正面見つけから会場に入って直ぐの18mもの壁面が展示スペース。
背景画は,地球の写真を全体に引き伸ばし友禅の帯が浮遊するイメージをデザインしました。
以下,「京都きものサローネ」に展示中の「宇宙ときもの」展から小作を紹介します。陸域観測衛星ALOS「だいち」が宇宙空間から撮影したアラスカ・スワード半島とそこから離岸する流氷を捉えた画像を,伝統的な雪輪取りという構図の着物柄として取り込んだ振袖です。着物一枚の画角が京都市ほどのスケールとなります。初めてこの流氷の画像を観た時,自然が創るモノトーンの流氷に心惹かれました,また流氷がひび割れ黒い海面が現れる様が,ちょうどロウケツ染のロウの割れように見えたことがこの作品作りのキッカケとなりました。八掛(裏地)にはグレートバリアーリーフのサンゴ礁の画像を施しています。きものでは,表の柄と裏の柄の組みあせのストーリー性を重んじる文化があります。ここでも,地球温暖化による海面上昇により南洋のサンゴ礁が死滅する危険性がある事など,環境問題をも提起するデザインとしました。上前の裾文様には雪輪を月に見立て,その月にむかって飛翔するうさぎの構図としています。
使用した生地はぽってり肉厚の丹後ちりめんの銀通し。全体にキラキラと光って氷の粒が輝いているような表現になりました。展示が終わったら上前の流水部分にでも,箔であしらいをいれてもいいかも。うさぎは京繍の白の糸で縫いつぶしが良いか,縁をコマでくくるかかでしょうか。
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(写真)アラスカ・スワード半島の流氷振袖
続きまして,上の振袖の浴衣バージョン。
振袖の図案をそのまま浴衣にするのでは面白くないですね。
そこでまずは可愛くするために,伝統的な雪の結晶柄を全体に散りばめました。デザインのテーマは「流氷振袖」と同じですから,この浴衣でも雪輪のモチーフを使いますが,こちらは雪輪自体を黒のシルエットでのぞかせてちょっと大人っぽい印象の図案としました。バックはもちろんロウケツ染めのような表情をみせるアラスカの流氷です。
振袖は「絵羽」と呼ばれる一枚の構図が全体の画面として構成されますが,浴衣は「送り」と呼ばれる繰り返し柄となります。テキスタイルデザインなら「リピート」と呼ばれます。この違いも図案を作る上で大きな制約となっていますが,浴衣らしい可愛さは,この送り柄からくるところも大きいのです。
さて真夏の衣装である浴衣に,真逆の季節柄の雪や氷をモチーフっておかしい?・・・そうなんです,暑い時期だからこそ,涼しい文様を身につけることで涼しさを感じようと,ちょっとした遊び心を入れてみました。仕立てもこの展示会用に振袖仕立てにしてみました。華やかですね。
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(写真)アラスカ・スワード半島の流氷と雪紋浴衣
最後にご紹介するのが,カーボンファイバー振袖です。
初めてこのカーボン素材を見た時,その「艶」に私は感動しまし,この素材できものを作りたい!と考えつづけていたのですが,この「宇宙ときもの」展をキッカケとしてついに実現しました。烏の濡羽色,あるいは濡髪に例えるのが良いのか・・・適当な言葉が見当たりませんが,この炭素が作り出す漆黒の艶感は,絹のそれとはまったく別次元の美しさがあります。全体のヌメ感はこれまでのテキスタイルでは本当に見たことがない作品となりました。
カーボンといえば皆さんも,ゴルフクラブのシャフトや自動車のパーツなどでご存知の方も多いかと思います。このほど就航したボーイング787にもカーボンが多く使われている事が報道されていたのは記憶に新しいですね。航空機の機体など宇宙航空産業の分野で欠くことのできないハイテク素材として,カーボンは今脚光を浴びています。
今回,この作品に利用したカーボンは飛行機に使ったりする素材と少し質感が違っています。最大の違いはそれは柔らかさです。通常のカーボンは樹脂で固められたガチガチの板状の素材ですが,この振袖は樹脂で固める前の繊維のままで生の糸のまま使用した,おそらく世界で初めての振袖なのです。(裏を取ってませんがこれを織れるのは世界で1社しかありませんので。。。)さて,ここから先は少し専門的になりますが,通常のカーボンはレピア織機と呼ばれる機械で織られる平織りの織物ですが,この振袖は西陣のジャガード織機で織られていいます
ということは,,,,織物に詳しい方なら容易に想像いただけるかと思いますが,このカーボンは平織りだけではなく,美しい織り文様を自在に織り込めるのです。この振袖では,独特のドレープ感を強調する織柄として,40センチの幅の山形斜文といわれる伝統文様で別織りしています。写真ではなかなか質感をお伝えできませんので是非,会場で直接ご覧になってください。ちょっとだけなら触ってもいいですよ(笑)
「京都きものサローネ」一般公開は11月3日のみとなりますのでご容赦ください。
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(写真)カーボンファイバー山形斜文振袖

「きものサローネ」

「京都きものサローネ」に宇宙ときもののタイトルできもの三点を出品します。

以下紹介文です。
せる同志社大学大学院ビジネス研究科・伝統産業グローバル革新塾のこれまでの歩みを紹介し、展示します。
「きもの」文様のデザインは、花鳥風月をよしとし、元来自然由来のモチーフを身にまとう事を粋としてきました。友禅が生まれた江戸時代の身近な草花を愛でた自然観と、21世紀の現代、科学の進歩にともに広がった自然観を「きもの」通じて対比する「宇宙ときもの」展では、宇宙空間から眺めた地球の姿をデザインに取り込んだきもの等の展示を行います。
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友禅×宇宙

このブログにも何度か書いている「友禅×宇宙」のこと。

JAXAさんとの取り組みでは今までに
観測衛星の取得した画像を使い様々な物を作って来たが、
今回はいよいよ私の制作物が宇宙に飛び出す事になりそうだ。

月曜日、同志社大学大学院ビジネス研究科のある同志社大寒梅館にて
JAXA(宇宙航空研究開発機構)の方々と
「友禅×宇宙」を実現するべく会議を行った。
前回、筑波宇宙センターでの会議以来実に4ヶ月ぶり。
今回、私の夢が叶い、
同志社村山教授のもとで進めさせていただいているプロジェクトは、
JAXAにおいて「文化/人文社会科学利用パイロットミッション」
と呼ばれるカテゴリーに属する”文系”の実験で、
国際宇宙ステーションISSの日本実験棟「きぼう」で行われる予定。
そもそもこのプロジェクトがスタートしたのは約二年前。
同志社大学大学院ビジネス研究科、
村山裕三教授率いる「伝統産業グローバル革新塾」の
宇宙好きの有志が集まった「宇宙とつながる京都研究会」が母体のプロジェクトだ。
(スタートアップ時に行ったシンポジウムの記録はJAXAのWEBサイトにあります)
そして今回の我々のプロジェクトの概要はこちら。
今回のプロジェクトでは、
日本人の誰もが心に様々なイメージを持つ風景(自然現象)でもあり、
友禅のモティーフにもよく使われる「桜吹雪」を
無重力の国際宇宙ステーション内で再現するというもの。
もちろんこの実験にもアナログの友禅染めも使う予定だ。
詳細は後日!